未来人2110
インターネットで知り合った
2110という少女がいた
彼女はインターネットにしか
友達がいなかった
どんな投稿をしても彼女を見ていたのは
私だけだった
彼女の書く妄想が好きだったんだ
自分が未来人だという妄想だった
よく二人で話していて
家が近い事を知り
私達はすぐに仲良くなった
そうして私は一つの秘密を漏らした
それは未来視ができる事
できると言っても見たい未来を
見れる訳じゃないんだ
時折インスピレーションが視えてそれは
必ず現実になっていた
私が未来視した事をメモに渡して
2110に学校で読むよう伝えた
いつも私はそれに時刻を書いていた
2110は毎回それに驚いていた
「どうして開く時間が分かるの?」
私の見た未来がいつもそのシーンだったから
なんていうのはつまらないので
「好奇心が我慢できる時間って人は決められているんだよ」
などというインチキを話した
2110は少し悔しそうな顔をした
「次はお前の予言外れるから!」
「どうして?」
「絶対に驚かない方法を思いついた」
私はこの時少し人の気持ちを透視する能力を
開花する事ができた
2110は紙を開かないつもりだったんだ
だから紙に大きくこう書いた
「君の負け、ジュース買っといてね」
私は約束を破ってワザと遅刻した
2110はジュースを持っていた
「ほらよ」
「なにこれ?」
「しらばっくれるな」
「分かんないよ言って?」
「負けたんだよ」
「負けたって?」
「見たんだよ」
「お化けでも見たの?」
「紙開いた」
「へえ、なんて書いてあった?」
「君の負けジュース買っといてね」
「うんうん!」
「この勝負に負けたら君は死ぬ」
「え?そんな事書いてないよ私」
「書いてあんだよほら」
たしかに紙には書いてあった
その頃の私は文字の癖が強すぎて
だから自分の文字だとすぐに分かった
未来視を使った
何も視えなかった
2110の家はとても大きくて
そうして家族の束縛が激しかった
学校ですら友達を作る事を
許されていなかったらしい
インターネットにハマって
不登校に彼女はなった
それから友達を作る事を許したが
既に学校ではコミュニティが確立され
彼女の入る隙間などなかった
私しか友達ができなかったのだ
だから2110の両親は
私をとても大切にしてくれた
娘の唯一の友達として
2110から連絡が来なくなった
心配になった私は未来視をした
何も視えなかった
家に押しかける事にした
2110は自殺で死んでいた
私のこの能力が不完全かつ
無意味な物だと思った
なんで分からないんだろうって
泣きたくなった
そんな思考を許さないような
2110の母から向けられる言葉
「あの子の遺書に貴方は未来が見えると書いてあったわ沢山の時刻が書かれただけの紙とそれを見た時の心境それから死の予言も」
「あれは私が書いたんじゃなくて」
「書いてたじゃない!時刻!」
「なんで怒ってるんですか?」
「あの子が死ぬ事を分かっていながら仲良くしていながらなぜ止めなかったの!?」
「ですから私は」
「言い訳なんて聞きたくない!二度と顔を見せないで!」
私は2110の紙に一言付け足した人物を知りたい
彼女が未来人であるという妄想は
家族にもよくしていた
だから余計にかな
私を恨みたくなったのは